Evolutionary Cell Biology
Yamato Yoshida Lab
Department of Biological Sciences, Graduate School of Science,
The University of Tokyo
To reveal the underlying mechanisms of the proliferation of cellular organelles
我たちは真核細胞に含まれる全てのオルガネラの分裂増殖機構の解明、さらには細胞が『増える』という真核生物に共通する基本原理の解明を目指しています。しかしながら一般的に研究に用いられている細胞・ゲノム構造が複雑化した高等動物・植物では、これらのオルガネラと細胞の分裂増殖過程を詳細に解析することは非常に困難です。このため私たちは、原始的かつシンプルな細胞構造を持つ単細胞紅藻シアニディオシゾン(通称シゾン)を主に用いて研究を進めています。シゾンは、①1つの細胞あたりに細胞核・ミトコンドリア・葉緑体を1つずつしか含みません。また②細胞周期を通じて細胞の形態変化に明確な規則性があり、顕微鏡観察によって細胞周期を特定することできます。そして③ゲノム構造も極めてシンプルであり、真核細胞生物としては最小のゲノムサイズ(16Mbp)と最小の遺伝子セット(4775遺伝子)から構成されており、④様々な遺伝子改変技術(相同組換え等)、遺伝子発現誘導法・抑制法、形質転換株の保存法も確立しています。また⑤様々なオルガネラを単離する技術が確立しているほか、⑥ミトコンドリアと葉緑体の分裂装置を単離することが出来る唯一の生物です。シゾンの生物学的特徴を基に、細胞生物学・分子生物学的な手法だけでなく、ゲノミクス、トランスオミクス、バイオインフォマティクス、一分子イメージング、ライブイメージング、ゲノム編集、さらには自分たちで新たな解析法の開発も行うことによって、各研究目標の達成を目指しています。
単細胞紅藻シゾン
シゾンの蛍光顕微鏡画像。細胞核、ミトコンドリア、葉緑体、ペルオキシソームなど、主要なオルガネラが1つずつしかなく、細胞壁も存在しない非常にシンプルな細胞構造を持つ。さらにゲノムDNAサイズも小さく、細胞核DNAにコードされた遺伝子も4800遺伝子程度と真核生物としては非常に少ない。細胞核はSpCas9-Venus、ミトコンドリアはmitoScarlet、葉緑体はクロロフィル、ペルオキシソームはmCerulean3-PTSによって蛍光可視化されている。(Hirata et al., 2024)
シゾンの細胞分裂過程
シゾンの細胞分裂過程を示すタイムラプス蛍光像。細胞周期がS-G2期に入ると葉緑体の分裂が実行され、G2-M期にはミトコンドリアの分裂が行われる。これらのオルガネラの分裂の後に細胞核分裂、細胞分裂が起きる。こうした特徴的な細胞形態の変化が伴うため、顕微鏡によって細胞を見るだけで細胞周期の特定も可能。(Yoshida and Mogi. 2019)